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2025/04/04 09:28

人間にとっても、腸内環境のバランスは健康維持の基盤であり、シンバイオティクスの活用が注目されています。シンバイオティクスとは、プロバイオティクス(有用菌)とプレバイオティクス(それらの栄養源)を組み合わせることで、腸内フローラ(腸内細菌叢)のバランスを最適化し、より持続的かつ相乗的な健康効果を得るアプローチです。

腸には全身の免疫細胞の約7割が集中しており、腸内環境の健全化は免疫機能の向上、アレルギーの抑制、炎症の緩和、栄養吸収の効率化などに寄与するとされています。さらに、腸内環境と脳は「腸脳相関(ちょうのうそうかん)」によって密接に結びついており、ストレス耐性やメンタルヘルスの安定にも関与することが近年の研究で明らかになっています。

このように、シンバイオティクスの概念は人間の健康と深く結びついており、私たちはこの知見を最上鴨の育成にも応用しています。「腸を育てて、鴨を育てる」という方針のもと、腸内環境を意識した特別配合の飼料を用い、鴨の健康と成長を根本から支えています。

腸が健全であることで、脂肪の質や肉のきめ細かさ、風味が大きく変わります。腸内フローラのバランスが整っている個体では、肉の酸化が抑えられ、鮮度が長持ちするだけでなく、筋肉中の脂肪酸組成も改善され、柔らかくジューシーな食感が生まれると実感しています。

実際に、私たちが育てた最上鴨では、脂の融点(とける温度)が一般的な鴨よりも低く、口どけの良さが際立っています。


【脂の融点比較】

最上鴨:13.3度

一般的な鴨:14.4度

豚肉:39.3度

牛肉:47.2度

※青空★レストラン調べ

このように腸活の成果は、数値としても肉質の違いに表れており、口当たりのなめらかさや旨味の広がりに大きな差をもたらしています。私たちは、こうした内側からのアプローチで、最上級の鴨肉を実現しています。


黒麹

黒麹は発酵効果により餌の旨味を増加させ、鴨の食欲を向上させます。さらに、腸内環境を整える微生物の働きを助け、健康な腸内フローラの形成をサポートします。発酵食品の摂取が家禽類の腸内微生物叢に良い影響を与えることが示されています。

加えて、黒麹菌の使用には以下のような効果が期待されています。

・成長促進

・飼料効率の改善

・飼料中のタンパク質要求を低減

・斃死率の低下

・肉質改善(過酸化物の減少・ビタミンEの増加)

・シェルフライフの延長(鮮度維持に貢献)

・筋肉中の不飽和脂肪酸の増加(風味や栄養価の向上)


米糠

米糠は抗酸化作用があり、鴨の回復力を高めます。また、健康維持に欠かせないビタミンやミネラルを豊富に含んでいます。抗酸化物質の摂取が家禽類の健康維持に寄与することが示されています。


古代海洋資源

古代海洋資源はミネラルを供給し、微生物が活動するための「お家」として働きます。これにより、健康な腸内環境を支える重要な役割を果たします。ミネラルの適切な供給が家禽類の腸内健康に重要であることが報告されています。

さらに、腸内環境が整うことで以下のような好循環が生まれます。

腸内環境を整える

吸収効率・免疫を維持する

健康な状態を維持し、肉質にも好影響を与える

排泄物はしっかりと消化吸収された状態で出る

腐敗ではなく発酵が進む堆肥へと変わる

畜舎全体が悪臭の出にくい環境となる


牡蠣殻

牡蠣殻は胃の成長を促進し、骨を強化します。カルシウムを豊富に含み、丈夫な身体作りを助けます。家禽類におけるカルシウムの適切な供給が骨格の健康維持に不可欠であることが示されています。

これらの成分をバランスよく配合することで、腸内環境が整った健康な鴨を育成しています。健康な腸は栄養吸収を高め、病気に強い体を作る鍵となります。この取り組みにより、質の高い最上鴨を皆様に提供できると確信しています。


オリゴ糖

オリゴ糖は腸内の善玉菌を増やし、腸内フローラを整える効果があります。これにより、鴨の免疫力が向上し、病気に対する抵抗力が高まります。研究によれば、オリゴ糖の摂取は家禽類の腸内環境を改善し、健康を促進することが示されています。


もみ殻付き飼料用米

もみ殻付きの飼料用米は、食物繊維が豊富で、鴨の腸内環境をやさしく整えます。食物繊維は家禽類の消化管の健康維持に役立つことが報告されており、腸の活動をサポートする重要な成分です。さらに、発酵を促進し、鴨が消化しやすい状態を自然と作り出します。

この飼料用米は、米どころとして知られる山形県最上郡で丹精込めて栽培されたもの。自然の恵みを活かし、最上鴨の健康な成育を支えています。


まとめ

「地球は祖先から受け継いだものではなく、子どもたちから借りているのだ。」 — ネイティブ・アメリカンの格言

この言葉は、私たちの鴨飼育の取り組みに深く通じています。

鴨の健康は、口から取り入れた餌が砂肝(筋胃)・腸を通過し、最終的に糞として排出されるまでの一連のプロセスにかかっています。私たちが最も大事にしているのは、この過程で最適な栄養素を最適な形で体内に取り入れられるようにすることです。

それは単に鴨の健康を守るだけでなく、排出された糞が大地の栄養素となり、次の世代の農産物を元気に育てる循環の一部となることを意味しています。

私たちは「大きな理(ことわり)」の中で生きています。鴨の飼育自体は自然界では不自然な営みかもしれません。しかし、私たちの取り組みによって環境負荷を抑え、少しでも自然に近づけることで、より最適な状態を実現できると考えています。


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