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2025/10/22 15:19

肘折温泉。山形県大蔵村の山あいに湯けむりが立ち上る、小さな温泉街。平安時代にはすでに湯が湧き、江戸の頃には出羽三山への参道口として栄えたという。木造旅館が並ぶ坂道には、湯治客が履く下駄の音が今もかすかに響いているようだ。


少し歩けば、蔦に包まれた旅館、増改築を重ねた配管が複雑に走る路地。新しいものと古いものが混じり合い、独特の生命感を放っている。人の手が加わり続けてきた"暮らしの跡"が、この温泉街の味わいになっているように感じた。


現実的に言えば、私たちはもはや成長経済の中にはいない。けれど、緩やかに変化しながら続いていく風景もまた、美しい。古びても、人がいて、湯が湧いて、灯りがともる。その持続こそ、ここで暮らす人々の強さなのかもしれない。


この村に、次の世代へつなぐ産業を育てていけるように。私たちは、時の流れに寄り添いながら、静かに歩みを進めていこうと思う。