BLOG
2025/04/07 11:12
先日、山形県鶴岡市の名店「アル・ケッチャーノ」にて、最上鴨スープの試飲を行いました。
シェフの奥田政行さんは、地元山形県産の食材にこだわった料理を多く提供しており、山形ではもちろん、世界的にも高い評価を受けているシェフです。彼はイタリア・ミラノで開催された世界野菜料理コンテスト「The Vegetarian Chance」で世界3位を受賞し、さらに著書『パスタの新しいゆで方 ゆで論』が2022年のグルマン世界料理本大賞でグランプリを受賞するなど、国際的にもその技術と独創性が認められています。2023年には「ゴ・エ・ミヨ」日本版でテロワール賞も受賞しており、地元の風土と食材を活かす料理スタイルが高く評価されています。
今回は開店前のお店をお借りして、特別に鴨スープと鶏スープの試飲会を実施しました。
試食して改めて感じたのは、鴨のガラは鶏に比べて味が出にくく、非常に繊細な出汁になるということ。
私が感じた印象は、鶏は「骨に豊かな旨みがあり、肉自体の味わいはあっさりしている」。一方で、鴨は「骨からの出汁は控えめですが、肉には凝縮された深い旨みがある」というものでした。
試作したスープは、ガラをペースト化し、空気を含ませながら攪拌して作ったもの。原料は100%ガラのみです。この製法は、特殊な技術によって透明度が高く、純度の高いスープをとる方法です。
奥田シェフは、一口飲むとすぐに味の出し方や配合について、驚くほど丁寧にメモを取ってくれました。
その分析力と繊細な感覚に、思わず「神の舌だ…!」と感動しました。
試食会の後、奥田政行シェフが即興で最上鴨を使った特別ランチコースを作ってくださいました。
一皿一皿、最上鴨の魅力を存分に引き出していてどれも本当に美味しく、感動しました!!
改めて鴨という素材の奥深さと奥田シェフの技術を実感する体験になりました。
この日の味は、きっと一生忘れられない特別な記憶になりそうです。
──ここで鴨ガラと鶏ガラの違いについて解説!
鶏の骨: 比較的柔らかく、骨髄からアミノ酸(特にグルタミン酸)が溶け出しやすいため、濃厚な出汁が得られます。
鴨の骨: 鶏に比べて硬く、脂肪分が多いため、成分が溶け出しにくく、繊細で上品な味わいの出汁になります。
脂肪の量と質
鶏: 脂肪が少なく、澄んだ出汁が得やすいです。
鴨: 脂肪が多く(特に皮下脂肪)、脂のコクが特徴的です。ただし、脂が多すぎると出汁が濁るため、適切な処理が必要です。
コラーゲン量
鶏ガラ: 特に若鶏の場合、コラーゲンが豊富で、ゼラチン質が多く含まれるため、とろみのある出汁になります。
鴨ガラ: コラーゲンが少なめで、さらりとした軽い出汁になります。
アミノ酸組成の違い
鶏: グルタミン酸やイノシン酸といった旨味成分が多く、はっきりとした味の出汁が得られます。
鴨: 旨味成分が繊細で、じんわりと広がる上品な味わいの出汁になります。
世界的な評価
鶏ガラ出汁: 「万能なベースストック」として、洋食・中華・和食問わず広く利用されています。
鴨ガラ出汁: 特別な高級料理向けとして、フランス料理や一部の日本料理で、香りや味わいを活かすためにシンプルな料理に使用されます。
鴨と鶏の出汁の違いについて
鶏と鴨のガラから取れる出汁は、見た目は似ていても、その風味や特性にははっきりとした違いがあります。
鶏ガラから取れる出汁は、比較的誰にでも親しみやすいしっかりとした旨みが特徴です。グルタミン酸やイノシン酸といった、わかりやすい旨み成分が豊富に溶け出し、濃厚でクセのない万能なベースとして、世界中の料理に広く使われています。
一方、鴨ガラから取れる出汁は、脂肪分が多い骨の性質やアミノ酸組成の違いにより、味わいはぐっと繊細で奥深いものになります。鴨出汁は雑味が少なく、香り高く、じんわりと舌に広がる旨みが魅力です。そのため、特別な料理や高級レストランで、素材の持ち味を引き立てる存在として重宝されています。
特に鴨の出汁は、脂のコクを上手にコントロールしながら引き出す技術が求められ、料理人の腕によって、クリアで芳醇なスープに仕上げることができます。この「手間ひまをかけて得られる特別な味わい」こそが、鴨ガラ出汁の最大の魅力といえるでしょう。
どちらが優れているというものではなく、
鶏は親しみやすく万能、鴨は繊細で特別感のある風味。
料理やシーンに応じて使い分けることで、より豊かな食体験を作ることができるのです。
そして最後に──
奥田政行シェフ曰く、「鴨と鶏を合わせて使うと抜群に美味しくなる」。
それぞれの良さを活かし、互いに補い合うことで、さらに深い味わいが生まれる。
商品:最上鴨ガラ(1kg)
商品:最上鴨モミジ(約1kg)
商品:最上鴨手羽先(約1kg)
最後に、実家で営んでいた蕎麦屋に奥田シェフが何度か来店してくださったことがあり、話の中で「私、実は大蔵村の巖神権現蕎麦の息子で、父が奥田シェフが来てくれた時のことを話してくれました」と伝えると、奥田シェフは「俺、みんなに権現蕎麦が山形県で一番美味いって言ってるんだ!!」と笑顔で話してくれ、とても嬉しい気持ちになりました。